南淵明宏先生02

第1回 南淵明宏先生

研究のきっかけは患者さんの肩こり

安藤サイエンティフィックな探究心といいますと、例えば私は4年ほど前に、咬み合わせが全身の健康にどのような関係を持っているかについての論文を発表しましたが、これも研究を始めたきっかけは純粋な探究心からでした。
1990年にUCLAの日本校を出て意気揚々としていたころだったんですが、いわゆる「かぶせ直し」という治療を何人かの患者さんにしました。磨耗して変化している咬み合わせの部分もすべて緻密に再現しまして、それを患者さんの残された歯にかぶせるわけです。私としてはもう、学校で習った以上の緻密なものを作り、これで完璧だと自画自賛していた(笑)。ところがその後、同じ治療をした患者さんたちから次々と、「先生、最近肩こりがひどいのですが、歯と関係あるんでしょうか」と聞かれるようになったんです。
「えっ? それはウチで治療し始めてから?」と私が恐る恐る聞くとみんな「そうだ」という。それだけじゃなく、さらに「腰痛も出た」という人が何人もいる。
私は悩んでしまいまして、UCLAで習った教授に聞いても「ノープロブレム。君は完璧な治療をした」という答えしか返ってこない。しかし、自分に対する不信感がどうにも消えなくて、有名な先生方をお訪ねして教えを請うたんです。それでも、みんな「問題ない」という。ある有名な咬合学の教授に至っては「あのね、安藤先生、そんな患者さんは相手にしないこと」。
南淵なるほど(笑)。
安藤私は歯周病とインプラントについてはスウェーデンのイエテボリ大学で習ったんですが、そのイエテボリ大学の先生たちに問い合わせても、みんな「肩こりや腰痛と、歯の咬み合わせが、どう関係あるんだ? わからない」というばかりです。それで仕方なく、自分で地道に研究を始めたわけです。
忘れもしない平成2年の頃でした。同時期に母校の解剖の教授に協力をお願いしてご遺体を1体いただきまして、筋肉の勉強も再勉強しました。その後約10年間で600人以上の患者さんに協力をお願いして、かぶせ直しの治療を行い、肩こりや腰痛を軽減させて参りました。その結果、咬み合わせによっておこるさまざまな全身症状との関係が明らかになったのです。
南淵それがやがて「咬み合わせと声の研究」にもつながっていくわけですね。
安藤そうなんです。

美声の秘密は咬み合わせの良さ!?

安藤かみ合わせの研究を本格的に始めて、それを治療にも取り入れ始めたわけですが、そのころからうちのクリニックに芸能界の人たちがよく治療にくるようになった。
南淵ほう。
安藤実は私、学生時代にダンサーをやっておりまして(笑)、まだ若いころのパパイヤ鈴木さんなんかはダンサー仲間だったんです。
南淵すごいですね(笑)。
安藤そういう前歴が知られているわけじゃないんでしょうけど、クリニックを開業したら不思議と芸能関係の人がくるようになって、一時期、咬み合わせ治療の患者さんの3割はそういう人たちでした。
ご存知の通り、芸能人にとって歯の咬み合わせは、歯並びとともにとても重要なんですね。すると咬み合わせの治療をした彼らのうちのかなりの数が、咬み合わせ治療の結果として「活(滑)舌がよくなった」というんです。口がよく開くようになって「声が伸びるようになった」という人も少なくない。それがヒントになって、今度は咬み合わせと声の関係へと研究が広がったわけです。
南淵しかし、「咬み合わせと声の関係」の研究というのは、例えば大学の先生などにいわせれば「なかなか目の付けどころがいいね」ということになるのかもしれないけれど、安藤先生から見れば当たり前のことなんですよね。ごく普通に患者さんを診ていて、日頃患者さんに対して思っていたことの結果であって、いわば先生の日常が生み出した着眼点なんです。マーケティング的にひねり出したアイデアではない。それはつまり、安藤先生が患者さんの本当のニーズに気づいたということじゃないかなと、僕は思うんです。
安藤そうですね。
南淵だから、医師が自分のクリニックや医療活動を活性化するのは、マーケットをつくろうとしたり、そのためのマーケティング戦略を立てることなどより、禅問答的な言い方になるかもしれませんけど、やっぱり平常心が重要だと思いますね。市井の視野、日常、そういったところから出発した取り組みが大事だと思います。
そういう意味では、安藤先生の「咬み合わせと全身症状の研究」や「咬み合わせと声の研究」は、私の「急性心筋梗塞と歯周病の関係」への着眼と、まったく同じ地点からの発想ですね。
でも「咬み合わせと声の関係」というのは面白いですね。実は私はオペラが大好きで、よく観に行くんですが、オペラ歌手の舌は楽器でいうとリードのような役割を果たしているわけですよね。
安藤そうです。
南淵その舌の働きも周囲の歯の咬み合わせが作る口腔の千変万化の空間性によって非常に大きな影響を受けるわけですね。そう考えると咬み合わせの具合が活舌(歯切れ)の良し悪しや声の伸びの良し悪しを規定するというのは、とてもわかりやすい。発声のことに関しては、オペラ歌手にしても他の芸能人にしても今はまず耳鼻科に行くと思います。でも安藤先生の研究がさらに進めば、「声のことなら歯科へ!」という時代がくるかもしれない(笑)。

第1回 南淵明宏先生

対談・連載中

  
  

当院をご推薦いただいております

患者様

歯科界

天羽 明惠

ソプラノ歌手

田渕 久美子

NHK大河ドラマ
「篤姫」「江 姫たちの戦国」脚本家

魚谷 雅彦

株式会社 資生堂 代表取締役

望月 俊孝

宝地図ナビゲーター
レイキティーチャー

中原 英臣先生

新渡戸文化短期大学
学長/医学博士

明田 征洋

カルビーポテト株式会社
前代表取締役 会長

咬合音声治療のご紹介