対談01
第1回 南淵明宏先生
「普通の感覚」と飽くなき技術の追究が医師を磨く
| 安藤 | 今まで私たちがしゃべってきたことはすべて、患者さんの持っている潜在的ニーズといいますか、医師に求める本当のニーズを感じ取るのは医師の感性だということの例証ですよね。 |
|---|---|
| 南淵 | そうです。病院の経営者的観点からみるとそれもマーケティングということになるわけでしょうが、マーケティングも意識しすぎると、患者さんのニーズを超え、ニーズを作ってしまおうとする傾向が出てくる(笑)。それが儲け主義の過剰な治療にもつながる。あくまでも自然発生的なものであることが重要なんです。 私が手術のビデオ収録を始めたのも、元はといえば患者さんのニーズの先取りみたいなものだといえます。 |
| 安藤 | ああ、そうなんですか。 |
| 南淵 | 患者さんが見てもわからないかもしれないけど、自分の手術がどのように行われたのかを知りたいと思う人もきっといるだろうし、何よりもビデオが回っていれば、医者も手抜きができないだろうと思ってもらえる(笑)。でも、そういうことは医師が特別な存在なのではなく、患者さんと同じ地平にいる、隠し事のない「普通の感覚」の一個の人間同士の関係なんだという感覚が双方になければ成立しない。逆にそれがあれば、患者さんの本当のニーズというものが医師にも感じ取れるはずなんです。なのに、みんなそれをやろうとしない。そういう意味でも、安藤先生がまず患者さんの「肩がこる」というつぶやきを無視せず、自分に原因があるのではないかと率直に自分を見つめなおすことから始めて、さまざまな研究につなげていった姿勢は素晴らしいと思います。 |
| 安藤 | いやいや、私のことはともかく、要は南淵先生のおっしゃる「普通の感覚」ですよね。患者さんとのコミュニケーションがすべての基本であるはずの医師は、それがないと終わりだと思います。 でも最近は患者さんもずいぶん変わってきて、きちんと自分の希望を伝えられる方が増えてきましたよね。南淵先生の患者さんも、自分の意思で直接、先生のところに手術を頼んでくるケースが少なくないんじゃないですか? |
| 南淵 | 今はたぶん、6割から7割ぐらいの患者さんが、直接的に来られますね。以前は他の病院からの紹介が多かったんですが、心臓の手術はリスクが大きいですし、医療事故なんかのニュースも日常茶飯に報じられていますから、患者さんとしても自分で決めた医師に手術してもらいたいと考えるようになったのだと思います。そういう傾向は4~5年ぐらい前から顕著になりました。 |
| 安藤 | またそういう患者さんは、よく勉強もしていますよね。 |
| 南淵 | そうなんです。自分の病気のことはもちろん、どこにいい病院があってどこにいい医師がいるか、あるいはその逆のケースについても、医師仲間より患者さんのほうがよく知っている(笑)。昔はそういう患者さんは「うるさい患者」ということでたいていの病院は敬遠していた。今やそういう患者さんに、なんとか探し当ててもらえる病院でないと商売にならない(笑)。だからそういう病院を目指すという目標に目覚めた病院も増えてきて、それはいい傾向ですよね。 |
| 安藤 | 事前の説明もほとんどいらないぐらいに勉強している患者さんが多いですね。でも、それだけに医師も病院も、より以上に勉強していかなければならない。歯科でいえば、咬み合わせは髪の毛1本分のズレでもジャストフィットしませんからね。 |
| 南淵 | そうした微妙なニーズを解決できるのは、先ほども話に出たサイエンティフィックな探究心と、妥協を知らないプロ意識や職人気質を原動力とする、飽くことなき技術の追求の結果です。患者さんもそれを正確に判断しようとする時代になりつつあります。心臓外科でも歯科でも、それはまったく同じことだと思います。 |













