中原英臣先生02

第2回 中原英臣先生

ミスをした後にこそ問われる「プロの仕事」

中原それからもう一つ、私が安藤先生を決定的に信頼するようになったキッカケがあります。ずいぶん以前に、インプラント(人工歯根)にしようということで、歯周病でぼろぼろになった歯を1本抜いたことがありましたね。
安藤ええ、ええ。
中原もうこの歯は使えないから、インプラントにしようと。そのための準備として歯を抜いたわけだけど、抜いた直後に、安藤先生がその歯をじっと見て、何か考え事をしている。私がどうしたのかなと思っていると、先生は突然、「この歯はまだ使える。生きている」というようなことを言った。
安藤そうでしたね。
中原ハッキリ言って、それは安藤先生のミスですよね(笑)。まだ使える歯を抜いてしまったということは。
安藤うーん、まぁ~ちょっと違うんですが、"その通りです"と申しておきます(笑)
中原でもね、普通だったら「この歯は使えない」と言われれば、患者はわからないわけですよ。なのに先生は自分のミスをすぐに認めて、それからの対処がまた早かった。これは、まぁ、骨折と一緒ですから、すぐに元のところに歯をくっつければきっちり咬み合いますから、インプラントは止めましょうと。
安藤それは再植の技術といいまして、スウェーデンでインプラントの勉強をしたときに習ったものなんです。レントゲンで見てもプローべという治療具を歯茎から挿入して確認してみても、どうやっても根っ子の骨が溶けていて抜かないとダメなように思える歯でも、内部が歯石などに汚染されていなくて、骨はなくても真っ白い歯牙のセメント質の部分が残されていればちゃんと再生できる場合があるわけです。中原先生のケースがまさにそれだったわけですが、これは抜いてみないとわからないということが、ままあるわけです。
中原でも、それは黙っていられたら、こっちはわからないわけですからね。それをきちんと説明して、大丈夫だからと。あれからもう4~5年になりますけど、調子いいですよ。 実を言いますと、歯を再植した直後の3日間は、これまでの人生を振り返ってみても何本の指に入るかというぐらいに苦しかった(笑)。再植したところは固定されていますから、当然使ってはダメなわけで、食事をするのにもえらい苦労をした。しかし、それできっちり治ったもんですから、安藤先生への信頼度は決定的になった。
安藤ミスはミスとしてきちんと情報開示しないと次善の策が打てませんから。ミスをしたことの謝罪も含めて、その対処もより良い形でちゃんとやるのが、私はプロとして当たり前だと思うんです。
中原それが当たり前じゃない人が多いから、医学界の隠蔽体質が相変わらず騒がれているわけです(笑)。それから今、いみじくもプロとおっしゃいましたけど、人間だから誰だってミスはある。だけどそれにすぐ気づいて即座に原状回復できる腕を持っているのも本当のプロですよね。外科医なんかにもそれは言えます。
とにかくあのときの、私の抜いた歯を持ってじっと考えているときの安藤先生の真剣な顔が今も忘れられなくてね(笑)。あれで私の安藤先生への信頼感、信用度はより絶大になったんです。

スタッフの採用基準はスキルより「ハート」

中原ところで安藤歯科クリニックのスタッフの採用基準とか、その後の教育とかは、どのような形でやっているんですか?
安藤まず採用の場合には、絶対にスキルだけでは決めない、というのが私の方針です。歯科医院に限らず、一般の企業の人などに聞いてみても、ある程度の技術を必要とする職種の採用基準は、当然のようにスキル重視の傾向が強いですよね。
事務系なら「パソコンはどの程度できますか?」、歯科衛生士なら「保健指導の経験はありますか?」「予防処置や診察補助の経験はどの程度ですか?」、歯科医なら「抜歯は得意ですか?」「インプラントはやったことありますか?」というふうに。だけど結局、こういう仕事で最後にものをいうのは、その人の人柄なんですね。
私が考えるに、仕事場における人間の価値というのは、突き詰めると「頭」と「ハート」と「腕」の3ポイントで、ハッキリ言って最初は「頭」も「腕」もいらない。スキル(技術)なんて「やる気」さえあれば、後からいくらでも磨ける。勉強だって後からいくらでも出来る。でも性格は持って生まれたもので、スタッフを採用するときにはそこを見ていかないと、後々、ひどい目にあう。それは自分の経験が言わせることなんですけどね(笑)。
中原なるほど。
安藤中原先生が最初にいらしたころのクリニックは今から20年前ぐらいに開業したんですけど、最初の1年間は友人たちに手伝ってもらったりしながら、まぁ、順調に推移しました。その後、自前のスタッフをいよいよ採用しようとアルバイト雑誌を通じて募集したんです。そのときの採用基準がやはりスキル重視で、スキルのある者から順位を付けて採用していったわけです。ところがこのときのスタッフがみんな、仕事中の私語は多い、休憩中もロクでもない無駄話ばかりで、誰一人として歯科医療のことを話題にする者などない(笑)。私も若かったものですから、院長室で一人になりますといつもムカムカして、そのストレスでお腹をこわしてばかりいました。
それで最初のスタッフのベースがそうだと、少しずつ入れ替っていくスタッフも朱に交わって、みんな同じような雰囲気になっていく。それである時に意を決しまして、いったん全員辞めてもらうという話をしたんですね。
その上で「明日からこの歯科医院を再建していきたい。ついては、それを手伝いたいと思う者はいないか」と聞いたんです。そうしたらほとんどの者が「やる気はない」といった中で、唯一「私は新しい医院を構築するスタッフになりたい」と言ったのが、中原先生の担当をしている歯科衛生士の殿城でした。
彼女はそのとき、まだ入って1か月ほどのところで、きっとそれまでの雰囲気が自分に合わないとも思っていたんでしょうね。それで私の意見に賛同して、残ってくれたんだと思います。
中原そうですか。まさに先生の同志ですね。
安藤そうなんです。でも、私も反省しましてね。その失敗は結局、自分が採用の際にその人の人柄ではなく、見せ掛けのスキルだけで判断していたせいでもあったんです。教育をきちんとできなかった責任もある。リーダーとしてひどいレベルだったんだと思います。

第2回 中原英臣先生

対談・連載中

  
  

当院をご推薦いただいております

患者様

歯科界

天羽 明惠

ソプラノ歌手

田渕 久美子

NHK大河ドラマ
「篤姫」「江 姫たちの戦国」脚本家

魚谷 雅彦

株式会社 資生堂 代表取締役

望月 俊孝

宝地図ナビゲーター
レイキティーチャー

中原 英臣先生

新渡戸文化短期大学
学長/医学博士

明田 征洋

カルビーポテト株式会社
前代表取締役 会長

咬合音声治療のご紹介